希少動物など多様な生態系を保護する取り組みは地球環境を守る一環です。半面、ユニークな動物でも、住民の生活に害を及ぼしたり、増えすぎたりすると、保護のあり方が論争になっています。
タイ お隣さんはオオトカゲ
バンコク中心部のルンピニ公園にいるオオトカゲ
タイの首都バンコクは運河や水路が複雑に入り組み、水が豊かな街だ。大都会にもかかわらず、さまざまな生きものが生息する。ちょっと驚く存在はオオトカゲだ。
市内の公園やゴルフ場の池には、体長一メートルほどのオオトカゲが生息する。ジョギングを楽しむ市民が多い中心部のルンピニ公園では、オオトカゲが池の周囲をはう姿があちこちで見かけられる。
正確な生息数は不明だが、一万匹はいるとの推計もある。まだ湿地帯が残る北部で増加し、水質汚染が進む南部で減少傾向にあるとの見方もある。今年二月、このオオトカゲが地元メディアの注目を集めた。
二年前のクーデターから民政復帰したサマック首相率いる新内閣の発足前日、首相府の中 に二匹のオオトカゲが侵入したのだ。タイでは、オオトカゲが家に侵入すると不運に見舞われると信じられている。「安定政権はやはり無理か」。地元メディアは珍事を一斉に伝えた。
販売のための家は町のバックスカウンティを下回る
不吉の象徴として嫌われるオオトカゲだが、動植物の保護を目的にしたワシントン条約の規制対象。バンコクのアピラック都知事はむやみに捕獲しないよう市民に呼び掛けているが、数が増えすぎても困るという立場だ。
タイ東北部ではオオトカゲの卵は食用にもなる。生息数が急増した場合、卵の一部を捕獲したり、どこかの島に移すといった案が検討されている。
(バンコク・大場司、写真も)
アメリカ ホッキョクグマ政策に批判
ホッキョクグマを絶滅危惧(きぐ)種に指定した米内務省の決定に、自然保護推進派から歓迎の声が強いかと思いきや、環境保護団体や地元のアラスカ州、カナダ先住民らがそれぞれ反対。袋だたきの状態となっている。
絶滅危惧種に指定したのは、えさ場となる北極海で海氷が減少していることが最大の理由。アラスカ州に残る約三千五百頭は、早ければ二〇五〇年には姿を消すと見通す研究報告もある。内務省は「指定は地球温暖化対策に援用されるべきでない」とくぎを刺したが、米政府が地球温暖化の影響を認めた決定として注目を集めた。
ところが、まずグリーンピースなどの国際環境保護団体は「温暖化対策に踏み込んでおらず、根本的解決にならない」とし、決定を無効とするよう提訴。
ショックカラーガン犬
一方、アラスカ州政府は「クマはこれまでの保護策で増加しており、指定は不要」と正反対の理由で提訴を発表。同州には指定が油田開発の足を引っ張るとの懸念が強い。
カナダの北方先住民も米国の狩猟客の減少を警戒。北極圏に近いヌナブット準州の政府は「米政府の決定は科学とイヌイット(先住民)の伝統を軽視している」と批判した。
気候変動、原油高、先住民の経済振興−。人間社会の重要課題が絡み、ホッキョクグマの未来は縛られたままだ。 (ニューヨーク・阿部伸哉)
エジプト 守れジュゴンの海
紅海に面したエジプト・ハルガダは、その高い透明度で知られる。地元のダイビングセンターや旅行業者らによる非政府組織(NGO)「ハルガダ環境保護協会」は絶滅が危惧されるジュゴンの保護運動に取り組んでいる。
ジュゴンは海藻を食べる哺乳(ほにゅう)類。周辺では少なくとも約二十頭が確認されている。ダイビングで観察を楽しめるが、ホテル開発と観光客急増による環境の変化で、藻場は十年前の三分の一に縮小。ジュゴンの生態への影響が心配されるようになった。
協会は二〇〇六年四月、ハルガダの南にある藻場周辺の海域約六千平方メートルでボートの運航を禁止。ダイバーが近づけないようにした。禁止海域をさらに数カ所増やそうと、政府の観光担当者らとの交渉を進めている。
ホークアイは何ですか
協会幹部のアムル・アリさん(36)は「ジュゴンを観察できる海域も残します。観光産業と自然保護を両立させたい」と語る。
旅行者の理解を得るため、各ホテルに置くパンフレットでジュゴンについて解説したり、ハルガダ行き航空機内の映像で自然保護の大切さを訴えたりもしている。アリさんは「また来たいと思ってもらえる美しい海を残したい」と話している。 (カイロ・内田康)
オーストラリア カンガルー害獣論争
オーストラリアで、国のシンボルとして愛されているカンガルーの駆除をめぐり、抗議と論争が続いている。
国防省は今年三月、軍用地のカンガルーが増えすぎて環境に悪影響を与えるとして、約四百匹を安楽死させる計画を発表。これに対し、元ビートルズのポール・マッカートニーさんらも巻き込んで国際的な反対運動が起こった。国防省はいったん計画を中止したものの、五月になって「他の選択肢がない」として駆除に着手した。
現場では動物愛護団体のメンバーや先住民らが抗議活動を行い、十人が逮捕される騒ぎとなった。
カンガルー駆除を進める行政と反対派の衝突は過去にもあったが、今回は労働党新政権が日本の捕鯨を「残虐」として強く抗議してきたことから、「鯨の殺りくには反対するのに� ��ンガルーは殺すのか」という批判が高まった。
この国では捕鯨については反対意見が圧倒的だが、カンガルー駆除については意見が割れる。害獣の側面も持つカンガルーについては、毎年二百万匹以上が駆除されている現実があるからだ。処理後は食用やペットフード、革製品などで広く利用されており、輸出もされている。(マニラ・吉枝道生)
中日新聞
by 伽依
※被害拡大を防ぐべく、業務停止を受けた動物病院のニュースをトップに設定する為、この記事は投稿日を操作しています。
0 件のコメント:
コメントを投稿